珍しくナルに所長室に呼ばれた。
お茶ならわざわざ呼びつけるようなことしないだろうし、ここ最近はミスもしていない・・・――― はず。
何だろう、と麻衣は首を傾げながらもドアを開ければ目に入ったのはデスク上の大小2つの包み。
いつもは書類や本で山を作っているデスクにあるその包みはやけに浮いて見える。
「片方選べ。」
何の説明もなしにいきなり選べと命令するナルにますます困惑せずにはいられない。
無言の圧力に促されるように麻衣はデスクの上に視線を戻す。
大きいほうはティッシュ箱より少し大きいくらいの箱で、小さい方はそれこそ掌に乗ってしまうほど。
大きいほうを選ぶか小さい方を選ぶか。
そういえば似たような昔話があったなぁ、と思考が横にズレかける麻衣。
「決まったのか?」
「何がしたいのかよくわかんないけど・・・・じゃぁそっち。」
指で指し示せばナルは小さい方を取って、麻衣の方へ放り投げた。
空中で弧を描いた包みは吸い込まれるように麻衣の掌へ納まる。
包みとナルを交互に見るものの何も言わずに黙ったまま。
仕方なく麻衣は包みに掛かっていたリボンを指で摘んでするり、と解いた。
「―――・・・ っ、」
麻衣は信じられない物を見たかのように驚き、思わず口に手を当てる。
そして胸の奥から込み上げてくる温かいものに瞳が潤む。
「嘘みたい・・・ナルがあたしにアクセサリーくれるなんて。」
箱の中には小さなオニキスが並んだクロスのペンダントトップが蛍光灯の光を反射して煌いた。
触るのも躊躇うほど丁寧に箱から取り出せばシャラ・・・とプラチナの鎖が流れる。
そのまま胸元に飾って見せればようやくナルの表情も僅かに緩む。
嬉しそうにトップを揺らし、はしゃぐ麻衣は満面の笑みで微笑んだ。
「ありがとうナル。」
素直な感謝を言葉にすれば、デスク上のもうひとつの包みが気になり始めた。
「ねぇナル、あっちは何が入ってたの?」
「気になるのか?」
「そりゃ・・・」
小さい方にはまさかのアクセサリーが入っていた。
なら大きい方にも身に付ける物が入ってるのかもしれない。
ナルが麻衣のために選んだ物があの箱の中にあると思うと好奇心が膨らむ。
それを察したのかナルは大きい包みを持って麻衣に手渡した。
「後悔するなよ。」
「え?」
一瞬だったがナルの口元が薄い笑みを浮かべ、麻衣の背筋がゾクリと震えた。
嫌な予感が全身に危険信号を発するも好奇心に負けて包みを解いてしまう。
「―――・・・ っ!!」
先ほどと同じように信じられない物を見たかのように驚き、今度は箱を持ったまま硬直する。
横からナルが箱の中に手を伸ばし品物のひとつを持ち上げると麻衣は壁際へ追いやられる。
その拍子に残っていた箱の中身が床へ散らばる。
しかし驚いたままの麻衣は自分が壁際へ追い詰められていることさえ気づいていない。
ナルの白い手が足のラインをなぞりスカートの中へ伸びそうになって初めて正気に戻った麻衣は慌てて抵抗する。
「ちょっ、ナ、ナルっ!?」
「悪いがクマのパンツは趣味じゃない。」
「1年以上も前のネタを引っ張ってくんなっ!しかも後から貰った小ネタの方とは盗人猛々しいわっ!!その上これは裕ちゃん宅の2周年企画の贈呈SSなんですケドっ!!意味通じない人いっぱいいるよ!?」
「関係ない。」
「関係ないとはなんだ!ってか人が話してるのに脱がそうとすんなっ!健全サイト様に迷惑かけるなっ!!」
「男が女にアクセサリーを贈るのは束縛、下着を贈るのは脱がすために決まってるだろう。」
「真顔で説明すんなっ!!さっきの感動を返せっ!!!」
スカートを抑える麻衣とプレゼントしたばかりの下着に履き替えさせようとするナルの攻防。
そしてお約束がもうひとつ。
「裕香さん2周年企画おめでとうございます。・・・・じゃなかった、ナルここのデータなんですが。」
何も知らないリンが所長室のドアを開けたところで動きが止まる。
所長室の床に散らばる色鮮やかな下着の数々と、どう見ても麻衣を襲っているようにしか見えないナルの姿。
「―――・・・ な、何をなさってるんですか?」
「見て分からないのか?取り込み中だ、後にしろ。」
「・・・・すみませんでした。出直して来ます。」
「ちょ、リンさん!助けてくれないんですかっ!?」
「もう勝手にやってて下さい。とばっちりは懲り懲りです。」
そのまま退出しようとするリンと動きを再開させるナル。
もちろん麻衣も必死にスカートを押さえ、尚且つナルの腕の中から逃げ出そうと試みる。
そんな麻衣から最後に力いっぱい叫んだ。
「際どい終わらせ方すんなぁ―――――― っ!!」
残念ながら麻衣の悲痛な叫びはお祝いムード漂うこの企画によって黙殺されるのであった。
碧琉さま。くふふふっ……となるようなお話をありがとうございましたvvv
真骨頂だよね!
本当にありがとう〜〜〜。
要領のいいリンさんっていうのが新鮮だった(笑)
これからもよろしくですv